歴史と宗教の視点から見る映画『シックスセンス』(ネタバレ!)

芸術

映画『シックスセンス』を何年ぶりかで観なおしたんですが、歴史や宗教に全く興味のなかった頃には無反応に通り過ぎてしまったシーンが、今回は新鮮に焼きつきました。

映画『シックスセンス』のネタバレを含む記事です。

歴史に「100パーセント真実」なんてある?

主人公少年と小児精神科医クロウ博士が初めて顔合わせするのは教会の中。そこでこんな会話が始まります。

クロウ「昔 ヨーロッパでは教会に逃げ込んだ 聖域だったんだ」
少年「何を恐れたの?」
クロウ「悪いやつらだ 牢屋に入れたり 傷めつけたりする連中だ」

それまでの私の感覚だと「悪いことしたら牢屋に入れられてもしょうがないやろ」という気持ちが7割。

残りの3割の意識は、魔女狩りがあったり、科学的に正しいガリレオを裁判にかけたりした歴史です。でも「それは大昔のこと」と自然に意識を切り離していました。(この3割の意識の場合、教会は逃げ場どころか、牢屋に入れたり傷めつけたりする悪いやつらの側になってしまっていたのですが)

少年が通う学校の場面で、この物語の舞台がフィラデルフィアで1790年から1800年までの間アメリカ合衆国の首都だったということが説明されています。フィラデルフィアはアメリカ合衆国で最も古い都市なんだそうです。学校の先生は「どの場所にも長い歴史が刻まれている」(いくつもの世代が生きてきた)と話します。

フィラデルフィアと聞くと、私の頭にあるメモ書きには、科学実験で軍艦がテレポーテーションしちゃったという不思議な事件フィラデルフィア計画くらいしか貯蔵してませんでした。

でもアメリカ最古の都市と聞くと、そこに渦巻いた過去の人々の亡霊の数も多いのだろうなと、そういう心構えで映画『シックスセンス』を観なおすことができました。

「死んだ人の魂がいちいち残ってたら、この先どんだけ増えてくんだよ。バカバカしい」と思うタイプの方の気持ちも分かるのですが、私はある体験があってそこはずっと保留中(次回書きます)。

映画『シックス・センス』の少年が通う学校は古くからある建物。学校の先生が「この建物は100年前には何に使われていたか」という質問をします。教室の黒板の上には、ずらりと歴史上の偉人たちの肖像が並んでいます。

少年「絞首刑をやったところ」
先生「それは違う どこからそんな事を?」
少年「死刑囚は泣きながら家族にお別れを言った 見物人はツバを吐きかけた」
先生「この建物は裁判所だったんだ アメリカの最初の法律が作られたところでもある 建物には法律家や議員が大勢いたんだ」
少年「その人たちが人を処刑した」
先生「誰がそんな話をしたか知らないけど きっと怖がらせようとしたんだろう」

学校が常に本当のことを教えてくれるとは限らないことは、多くの人がもう知っていることと思います。歴史の捏造や目隠しは、むかーしから当たり前。それは情報統制されたあの国だけでも、GHQに仕切られた日本だけでもなく、アメリカさえそうなんだろうなと思う場面でした。

このシーンで、少年は先生の子供時代のことまで当ててしまい、先生は取り乱してしまいます。

結局、少年は校内で、絞首刑になった3人の霊を見ます。3人は白人女性と黒人男性と子供。その目は死んでいるのではなく、訴えかけようとして少年を見据えています。この3人が象徴しているのは「弱い立場だった人たち」だと私は解釈します。魔女狩りと奴隷…そしてまだ小さなこどもが、大人(それも偉い人)に殺されていたということを表している場面ですね。

3人の幽霊の気持ちを短い言葉で私が代弁するとしたら「理不尽に殺されて納得いかねぇ~!!」なんじゃないかなと思います。

少年は霊について、劇中でこう言ってます。「お互いには見えない」「見たいものしか見ない」「死んでるって思ってない」「そこらじゅうにいる」

これ、今生きている人間にも当てはまる部分たくさんある気がします。私自身も例外ではなく時に当てはまります。(「自分は一度たりともどれにも当てはまったことはない」と自信たっぷりに言い張る人は、きっと頭が弱いんだろうと思います)

「見たいものしか見ない」なんて最たるものですよね。

「いやなら見なければいい」とかもありますね。心の平静や健康を保つためには取捨選択は大切なことであるものの、悪いやつが不都合なものに蓋をする役目もある言葉です。不都合な歴史に蓋をするのも似てますね。

少年の傷は霊か自傷行為かイジメかDVか?

さて、幽霊などというものに付きまとわれて実害が出ている人が実際にいるとした場合、霊の存在を第三者に証明できない本人はどういう状況に追い込まれるんでしょうか?

映画『シックスセンス』の主人公少年の場合だと、それを秘密にしなければ精神病扱い。化け物扱い。嘘つき扱い。その上、霊がしでかしたことを自分の仕業と疑われ、やってないことをやってないと言うと信じてもらえず罰を受ける羽目に。

霊の仕業によって少年の体に現れる傷は、霊を信じない人たちにとっては、少年自身の自傷行為か、クラスのイジメか、親のDVか? 母親はDV加害者と疑われ「納得いかねぇ~!」。そんな母親はクラスメイトにイジメをやめろと電話して、疑われたクラスメイトも「納得いかねぇ~!」

「納得いかねぇ~!」と思ってる霊によって、周囲の人間たちが「納得いかねぇ~!」状況に追い込まれるという負の連鎖ぐーるぐる。

この物語の不幸が連鎖している部分の原因は、幽霊ではなく、普通の人間がそれを信じないということにあります。そして、そもそも納得いかない殺され方をした霊を生み出したのも、人間です。全部、元凶は霊ではなく人間。

また、彷徨い続けている霊は、メッセージを受け取ってもらえないことにさらなる不満を抱いています。きっと、少年に対して「見えてるのに無視したり逃げたりしないでくれよ!」と思ってるから、少年の体に傷をつけたりするのかもしれません。

けれど少年が心を開いて「幽霊が見える」とクロウ博士に秘密を告白してみたら、クロウ博士は信じるどころか「重症や。俺の手には負えんわ~」みたいに思ってしまうのです。

信じることの難しさ。宗教も歴史も心理学も科学も、所詮は間違いを犯す人間によって作られた間違い込みの諸々です。まっさらに心を開いて全てを鵜呑みに受け入れるのは難しいことだと思います。

受け入れることで問題解決

ですが…

突破口が開けるのは、クロウ博士が少年の言を受け入れてくれたことからでした。ギブアップしかけたクロウ博士は少年に次のようにアドバイスをします。

クロウ「霊が君に語りかけてくるのはなぜなのか、よく考えて欲しい」
少年「助けて欲しいから」
クロウ「そうだよ。先生もそう思う。どんなに恐ろしい霊も助けて欲しいんだ。助けてあげれば、もう現れない」
少年「どうやって?」
クロウ「話を聞く」

少年は聡明な子なので、こう続けます。

少年「助けるんじゃなく、誰かを苦しめろと言ったら?」
クロウ博士「そんなこと言わないよ」
少年「絶対確信ある?」
クロウ博士「わからない」

結局、少年は霊を拒絶することをやめ、霊が伝えようとしているメッセージを聞くことにしました。必要があれば霊の心残りを晴らすメッセンジャーになりました。それによって霊も周囲の人間も問題解決していきます。

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そうだったのか! カウンセリングと霊体験から見る映画『シックスセンス』(ネタバレ!)
前回の続きです。映画『シックスセンス』のネタバレを含む記事です。 小児精神科医のクロウは、最初は霊が見えるという少年の言葉を信用していませんでしたし、自分には手に負えないと投げ出しかけていました。 でも、「先生しかいない」と泣いて嘆願する少年を振り払えず、少年の言い分をそのまま受け止めることから再スタートを切ります。つまり少年が「霊が見える」と言う発言をそのまま受け入れたのです...

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